【授業紹介】道徳の指導法

 「道徳の指導法」は小学校の教員免許を取得するための3年次科目です。この週の授業では「情報倫理」をテーマにした学修を行いました。授業前半で、文部科学省が求めている「情報モラル教育」の基本的な見方・考え方を学んだうえで、後半ではインターネット/SNSをテーマにした授業構想のグループワークを行いました。

 グループワークではまず、「情報倫理/情報モラル」と聞いてイメージするものをGoogleフォームで回答し、これがどのような課題・問題なのかを全員で共有して、具体的なテーマを整理しました。そのうえで、持参したパソコンを利用して、インターネット上から教材を見つけ出し、その教材を使用した授業の構想を行いました。

 各班は、「ネット依存」「SNSトラブル」「個人情報」「写真・動画の流出」などのテーマや、あるいは「ジェンダーのアウティング」といった現代的なテーマで授業を構想し、最後に発表を行いました。道徳は2018年度から教科化され、教科書をもとに授業をすることが基本となっていますが、「情報モラル」のように数か月で状況が変化するようなテーマの場合は、子どもに身近な鮮度の高い資料を探し出して、それを授業に活用する力もつけて欲しいと思っています。


 ところで、子どもとインターネット/SNSに関わるニュースは連日のように報道され、目にしない日はないと言っても過言ではありません。SNSでの誹謗中傷、違法アップロード、闇バイトなど、様々な問題に子どもたちは巻き込まれたり、あるいは無意識のうちに加害者になったりする恐れがあります。しかし、そのような危険があるからといってインターネットを遠ざけては、かえって適切な行動を取ることができなくなります。

 では、子どもたちが適切な行動を取れるようにするためには、どのように授業を行えばよいでしょうか?冒頭で、授業テーマを「情報モラル」ではなく「情報倫理」とした意味がここにあります。「モラル」というと、どうしても「~しなさい」「~してはいけません」のように、決まった道徳的価値を教え込む(これをインドクトリネーションと言います)というイメージが強いですが、現代のような「予測困難な時代(VUCA)」においては、従来の価値観が通用しないことが多々あります。そのため、次世代を担う子どもたちには、新しい時代の道徳を自ら「考える」力が必要でしょう。これは学習指導要領が求めている「考え、議論する道徳」とも方向性が一致しています。そうしたニュアンスを「倫理」という言葉に込めています。学生のみなさんには、「考え、議論する道徳」を目指して、面白くて深く考えることができるような道徳の授業の構想力を身につけて欲しいと願っています。